日本は地震大国ともいわれており、さまざまなところで地震などの自然災害に備える取り組みが行われています。また新型コロナウィルスのように世界中の経済活動を制限してしまうリスクもあります。そこで今回は、工場に必要BCP対策について解説します。BCP対策で押さえるべきポイントも見ていきましょう。
工場に必要なBCP対策とは？
BCPとは、Business Continuity Planの略称であり、日本語では事業継続計画と訳されます。自然災害などによって企業の経済活動がストップしてしまった場合、ひとつの企業のみならず、従業員や社会の経済そのものに大きな影響を与えかねません。
そのため、BCP対策を立てることが重要です。とくに、日本は地震大国ともいわれており、一年をとおして数多くの地震が発生しています。規模によって被害総額や被害の範囲に違いはあるものの、直近では北陸での地震や、熊本地震、東日本大震災などで大きなダメージを受けました。
そういった背景がある中、中小企業をはじめ、工場ではBCP対策が重要視されつつあります。製造業についていえば、地震や台風、河川の氾濫などの影響で製造ラインにトラブルが発生して、稼働を停止しなければならないこともあるでしょう。
製造ラインがストップしてしまうと、経済活動ができなくなり、売上の確保が難しくなってしまいます。大企業のように日本全国に拠点がある場合は、ほかの工場を使って一時的に作業をカバーするといった方法も取れるでしょう。
しかし、中小企業の場合、一か所しか工場がないケースも珍しくありません。そのような場合、リスクを分散することができないことに加え、ほかの拠点で製造を補うことができないので、大きな損失につながってしまいます。したがって、中小企業の工場では、さまざまなリスクを想定したBCP対策が必要なのです。
工場で実施すべきBCP対策の進め方
工場で実施すべきBCP対策を進めるには、計画的かつ段階的に取り組むことが重要です。まず、BCP対策の第一歩として目的を設定するところからはじめましょう。このフェーズでは、そもそもなぜBCP対策の策定が必要なのか、そして、どのような計画を立てなければならないかを検討していきます。
最初に目的を設定することで、具体的な方針や行動計画を立てやすくなるといったメリットもあります。次に、重要な役割を選定しましょう。自社の業務において、優先度が高い業務を洗い出し、優先順位をつけることがポイントです。
というのも、実際に被害を受けたときは、すべての業務を同時期に復旧させることは難しく、取捨選択が必要になるケースも少なくないのです。あらかじめ優先順位をつけておくことで、限られたリソースの中で、復旧を進めることができます。
業務の優先順位をつけられたら、次にリスクアセスメントを行いましょう。工場内で発生しうるリスクを洗い出し、リスクアセスメントを行います。自然災害や機械の故障、サプライチェーンの問題など、どのようなトラブルが生じる可能性があるかを明確にし、その影響の大きさや発生頻度を評価します。
そして、リスクに対してどのような対策を講じるかを計画します。そのうえで、リスク対策にも優先順位をつけておくことが大切です。たとえば、人命リスクを優先するのか、経済的損失を優先するのかなど、対策にも優先順位をつけておきましょう。
そして、具体的対策を検討していきます。たとえば、地震に備えて設備の耐震化を行ったり、火災に備えて消火設備を充実させたりすることが考えられます。また、重要な機械が故障した場合に備えて、予備の機器を確保することや、外部の修理業者との契約を結ぶことも有効です。
さらに、工場の生産ラインの優先順位を決め、どの業務がもっとも重要で、どのリソースが欠かせないかを明確にすることが大切です。その後、全従業員へのBCP対策の教育と訓練を実施します。災害時や緊急時にどのように行動すべきかを理解してもらうため、定期的に避難訓練や緊急対応訓練を行います。
工場におけるBCP対策で押さえるべきポイント
ここでは、工場におけるBCP対策で押さえるべきポイントを見ていきましょう。自然災害などが発生したときは、まず従業員の安全確保を徹底して行うことが大切です。BCP対策におけるリスク対策の優先順位として、人命を優先させることがポイントです。
そのためには、定期的に避難訓練を行ったり、災害を想定した危機管理のロールプレイなどをしたりするといいでしょう。さらに、事前に従業員の安否確認の方法を定めておき、全従業員に周知しておくことが大切です。
そのほか、災害時の設備の固定や、防災グッズの備蓄なども行っておきましょう。さらに、データ管理についてもしっかりと検討しておくことが大切です。災害によってデータが飛んでしまって復旧できなくなってしまうケースも少なくありません。
そのため、あらかじめデータを分散しておき、すぐに復旧できる体制を整えておきましょう。また、代替工場や設備についても確保しておくことがポイントです。
もちろん、コストはかかってしまいますが、長期的に製造ラインがストップしてしまうと大きな損失になりかねません。経済的損失と代替設備の導入のバランスを確認したうえで、検討しましょう。
まとめ
今回は「工場に必要なBCP対策とは？」をテーマに、そもそもBCP対策とはどういったものなのかに加え、計画の進め方や押さえておきたいポイントを解説しました。日本は地震大国ともいわれており、数多くの地震が発生しています。地震の規模が大きくなると、経済活動に影響を及ぼし、中小企業に大ダメージを与えかねません。そのため、とくに製造業を営む中小企業では、BCP対策が重要といえます。BCP対策を立てることで、万一の事態に備えることができます。そして、早急な復旧活動ができるようになるでしょう。
